精神保健福祉士の試験で学んだこと2
前回のブログの続きです。
精神保健福祉士の資格は実習に行かなくてはなりません。私は地域活動支援センターと精神病院で実習を受けました。地域活動支援センターでは1か月ほどお世話になりました。
・地域活動支援センターとは
地域活動支援センターとは、精神障害を抱える人の支援機関であり、名前そのまま地域で暮らす精神障害の方が、地域で生き生きと活動できるように支援をする機関です。私はMさんと行動することが多かったのですが、たくさんの機関に同行させてくれました。その中で特に印象が残っているのが、Mさんが行ったあるクライアントさんの支援です。(守秘義務があるのでかなり事実を変えて書きます。)
・人間不信なゆかさん
地域活動支援センターには様々な事情を抱えた精神障害の方が相談にきます。ある日、24歳の女性(ゆかさんとします)がセンターに来ました。その女性は、小さいころにご両親が他界し、天涯孤独な女性でした。人間不信になっているのか、とても態度が悪く、Mさん以外の方とはまともに会話もできない状態でした。
ゆかさんは、精神障害を抱えているために、仕事に就くことができず、生活保護を受けて2年が経っていました。住居の更新時期が迫ってきたので、別の住所を探すことになりました。
・住所探しに苦戦
そうして、Mさんはゆかさんと一緒に転居先を探しに行くことになりました。しかし、不動産屋に行ってもゆかさんの態度は変わりません。ふんぞり返って、不動産屋に対してとても攻撃的な言動をとります。
生活保護を受けている方にとって住所探しは難しく、収入が不安定であるために、大家がNGを出すことも多々あります。ですので、そう回れる不動産屋は多くないのです。できれば品行正しく、問題ないアピールをしたほうが有利になるはずです。
しかし、ゆかさんは絶対に自分のスタイルを曲げません。笑顔一つなく、不動産屋に攻撃的な言葉を言うのです。そして実際行くたびに断られてしまいます。このとき私のなかに、むずむずと、ゆかさんに指示したくなる感情が沸き上がってきました。
もっと、態度を柔らかく、悪態をつく癖を直さないと、どこにも転居できないよと説教したくなるのです。
・Mさんはゆかさんのありのままを受け入れる
しかし、Mさんは、何も言わず
「なかなか決まらないね~ なんでだろうね?!今度どこさがそうか~」
とすごくのんびりしているのです。
断っておきますが、Mさんは精神保健についてすごく勉強されていて、私が知らないことは何でも即答してくれるような優秀な方です。そんなMさんは、自分の視点に立つのではなく、あくまで乗り越えるのはゆかさん自身というスタンスを大事にして、ゆっくりゆかさんと付き合っていました。
確かに、〇〇しなさい!△△しなさい!と言って、ゆかさんの態度を改めさせ、実際に住まいを見つけることは可能だと思います。実際そうするPSWも多いでしょう。
しかし、Mさんはもう少し上の次元から見ていたのだと思います。本人が自分で考えて、主体的に動く力がなければ社会では生きていくことはできません。ある意味で失敗する経験を粘り強くMさんは付き合い、温かく見守っていたのです。
・主体性とはなにか
これは本当に感動しました。Mさんは本当にクライアントの「主体性」を大事にしていて、本人がどうしたいのか?本人がどう生きたいのか?を徹底的に考えていました。
私の専門はSSTです。SSTはソーシャルスキルトレーニングですので、こうしたほうがよい、ああしたほうがよいという視点は必ず入ります。そうしなくては時間がかかりすぎますし、スキルとして獲得できないからです。講座代金を頂いていますので、ある程度の即効性も求められます。
・選択は本人がすべきこと
しかし、あくまで主体性は本人にあることを忘れてはならないのです。私ができることはあくまでも、環境と知識とスキルを「提案」するのであって、それをすることが「正しいと押し付ける」「強制する」ことをしてはならないのです。
すごく抽象的な気づきでしたが、実習を通して一番感動したことでした。もちろん精神保健の法律や制度も勉強しましたが一番これが心に残った次第です。Mさんに感謝です。
さてさて!次回から止まっていた対人恐怖症克服期を再開します♪よかったらまた来てくださね。